代金先払い契約での仮想通貨を用いた価値の等価交換の実現と価値交換のセキュリティ
「205X年,ついに店の商品棚から実体のあるモノは無くなり,ただの空気塊にお金を支払うようになる。」
これは,立体映像(3D表示)技術を用いて実社会であるフィジカル空間にあらゆるモノを描く(再現する)ことができるようになった近未来での話です。お店にある商品は全て立体映像で展示されており,触覚提示技術により実際に手触り感や使い心地を確認でき,ベッドなどの大型家具(商品)にも実際に寝転がって寝心地なども体験できるようになりますが,目の前に見えている商品はその場には存在しておらず,実際には空気の塊に触れたり,座ったり,寝転がったりしているだけです。お店で代金を支払ってもその場で商品をもらうことができない代金先払いでは,お店(販売者)側には何らリスクはありませんが,お客(購入者)にとっては本当に商品が配達されるのかというリスクがあります。
オンライン上のサイバー空間にある店舗では,バーチャルであることの利点として店舗スペースの制限がないため,限りなく取り扱いできる商品数を多くすることが実現できていますが,技術革新によりサイバー・フィジカル空間を1つに融合することで,これまで店舗でできた実際に商品に触れるという体験と,数多くの商品の中から自分の気に入った商品を見つけることができるネットショッピングでのお買い物体験とを,お店の中(実店舗の店内)でもできるようになります。
近年では,街なかのお店では実際の商品を見て選ぶだけで,支払いカウンターでは商品代金を支払うけれども,購入した商品は後日自宅まで配送されるといった販売方法も行われるようになってきていますが,代金の支払いと同時に購入した商品が自分のものとなる即時性と安心感は,実店舗で商品を購入するメリットの1つでした。
商品交換は,貨幣などの媒介物によらず価値が等価な商品で交換する物物交換が交換の原始的形態でしたが,価値尺度,流通手段,価値貯蔵手段の3つの機能をもつ商品交換の媒介物として,人類は貨幣を発明しました。物物交換では,片方の商品が後から届くといったことはなく価値の等価交換は実現されていました。また,貨幣を用いる商品販売でも,対面販売では商品と代金を交換することは同時に行われており,価値の等価交換は実現されています。
一方,カタログショッピングやネットショッピング等の通信販売などは,新しい形態の商品交換で,商品・貨幣が交換される時間や場所が同一ではなく,また,商品交換も販売者,購入者の二者間のみで行うことができず,運送業者など第三者が介入するため,取引関係が一層複雑化しています。また,昨今では販売者が一般消費者であることもあたりまえの世の中になってきており,取引関係もより多様化してきました。
このような状況の中,郵便物や配送物が配達途中で廃棄・放棄されるなどの事態も生じるようになってきており,「商品代金の支払い損になりはしないか」,「注文商品は間違いなく届くのだろうか」といった購入者の不安は増すばかりとなっています。
そこで,本研究では第三者が介在する取引も含む全ての取引において,仮想通貨を利用して価値の等価交換を実現し,デジタルツインのサイバー・フィジカル空間での安全な商品交換を実現する技術研究を行います。
〈本研究のねらい〉
デジタルツインのサイバー・フィジカル空間での安全な商品交換を実現する手法・技術の開発
(なお本研究で開発された技術は,既存のカタログショッピングやネットショッピング等の通信販売や,メタバース等のバーチャル空間内の店舗などでの商品購入にも適用することができます。)
・電子通貨の技術を活用した電子化債券の運用システムの開発
・商品販売・購入時,商品発送・配達時の運用・サポート,既存の商品販売,荷物配送の基幹システムとの連携運用・サポート技術の開発
・宅配ボックスを含め,商品を受け取る購入者側の脆弱性を解決するサポート技術の開発
・電子化債券の交換を実現
・電子通貨の機能として,以下に示す電子化債券の仕様を実現
『電子化債券の仕様・機能』
【電子化債券①】
1 商品受取時に交換する【電子化債券②】が発行されるまで価値の等価交換を実現する。
2 電子通貨の価値は購入商品の価値と等価にする。
3 電子通貨の機能として譲渡制限を付加し,次の譲渡先として「販売者」を指定する。
4 電子通貨の機能として期日指定を付加し,譲渡制限の期間を「商品の発送予定日まで」とする。
5 譲渡制限の期間経過後は,譲渡先の制限なく,誰にでも譲渡(換金)できる。
【電子化債券②】
1 購入者の商品受取時まで価値の等価交換を実現する。
2 電子通貨の価値は購入商品の価値と等価にする。
3 電子通貨の機能として譲渡制限を付加し,次の譲渡先として「運送業者」を指定する。
4 電子通貨の機能として期日指定を付加し,譲渡制限の期間を「商品の到着予定日まで」とする。
5 譲渡制限の期間経過後は,譲渡先の制限なく,誰にでも譲渡(換金)できる。
【電子化債券①,②の交換(交換所)】
1 販売者を介さず,運送業者が発行した【電子化債券②】を購入者に直接送付できる機能を実現する。
2 購入者が【電子化債券②】を受け取ると同時に,【電子化債券①】を回収する(交換)機能を実現する。
3 運送業者を介さず,運送業者が発行した【電子化債券①】を販売者に直接送付できる機能を実現する。